たまりば

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フィンランドのTom

町田市で作曲家やってるTomです。こんどはドローイング描いてるフィンランドのTomの話。

はい、ゲイアートのTom of Finland(1920-91)ダス。渋谷パルコのB1F、Gallery Xで日本初個展(10月5日まで)。

https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=396

鉛筆一本で描いたのがほとんどなんだけど、手近にあったメディアがそれだから。
写真や雑誌からモデルをえらんで、じぶんのファンタジーに沿ってポーズをつける。
シチュエーションの中で男たちはさそいあう。まなざしで。ポーズで(←ハッテンだー)。
ユニホームへの関心は第2次世界大戦のドイツ軍から。当初からブーツや革ジャンへの興味。
SMやボンデージヘの関心も、革製品を身につけるところから。
じぶんの欲望に肯定的で、ハッピーであってほしい。
発達した身体の男性らしさが、自己肯定とイコールになるように。

↑そんなかんじのことをかたる、1985年ロサンゼルスのインタヴューがながれていた。
ちょっとつたないかんじの発音が耳をひく。フィンランド出身で、英語は母語ではない。
床に直置きのテレビ。字幕なし。20分ていど。こっちもすわりこむ。

ちゃんと字幕つけて鑑賞できたら、もっとよかったのでは。

たしかにカジュアルな展示で、ダークルーム(18禁)つきのゲイバーみたいな趣向。
北米デビュー作(1957年)をふくむ、えりぬきの全30点。

インタヴュー当時のロサンゼルスといえば、エイズ禍のまっただなか。
最晩年の1989年のドローイングでは、男性がひとり、堂々とまっすぐこちらを見つめる作品が強い印象をのこす。

https://www.tomoffinland.org/tom-of-finland-comes-to-japan/

若く、健康で、発達した身体に恵まれ、顔つきにもポーズにも、自己肯定感が満ちあふれるかれら。
人生でもっとも楽しい時期を体現するその表象は、まよけのように、心の支えたる意味をもっていたろう──若くして病にたおれていく、ゲイコミュニティで。

インタヴューに耳をとおして、あらためてながめる男性たちの着衣。
1989年のドローイングに描かれる革ジャン、ブーツの神々しさ。
初期の1947年から40年以上、鉛筆一本で描きつづけるとこうなるのかと。

日本初の名に恥じない、充実したセレクションであった。

ランディ・シルツ『そしてエイズは蔓延した』(下)(草思社)
F・バレンタイン・フーベン3世『ビーフケーキ』(Taschen)  


  • 2020年10月03日 Posted by Tom Motsuzai at 10:48Comments(0)