たまりば

芸術・創作 芸術・創作町田市 町田市

自作解説9号目『そよかぜのみたもの What The Breeze Has Seen』

町田市で作曲家やってるTomです。そしたら『そよかぜのみたもの What The Breeze Has Seen』にしよう。


楽譜は書いてあるとおりに演奏するもの。そのための指示が書いてあるのでしょ?だから、楽譜をしっかり読みましょう(=読譜能力)。

ソルフェージュとは、つまり読譜・再生能力の養成です。それは作曲にも役に立つ。おかげで、書いてる音符の音価や、譜割や拍子を決定するのに要する時間を、節約してくれる。

でも、まだ海のものとも山のものとも知れず、ひねくりまわしているときには、むりに拍節に押しこんでしまわないようにしている。さっそく自作解説1号『秋のダンス Autumn Dance』に結実したリズム型は、最善のかたちをみいだすまで、あれこれこねくりまわしてた。

それでも楽譜には、書いてないことってあるのでは?書いて説明できないことも、あるのでは?また、決めておかないでいいこともあるのでは?

よくいわれる演奏の味だとか、グルーヴだとか、演奏者側に託されるものって、たいてい楽譜には書けないこと。しかたなく「ノリよく」と、指示したところで、それがどういうものかは、説明されないままだ。

たとえばウィンナワルツのズンチャッチャッにはクセがあって、たんなる四分音符3つの3拍子におさめられないのは、周知の通り。

それと、装飾音符も挙げられる。どんなタイミングで、装飾がつけられた音符につなげるかは、奏者に一任。装飾音符が早く/遅く演奏されたら、それは全体のテンポにも影響してくる。

それでもいいじゃないか。ピアノはだいたい一人で演奏が完結するのだし。

そんなわけで、この曲には装飾音符を多用。自作解説6号目でとりあげた『まなざしを上げて Keep Your Head Up!』みたく、すこし拍節の強制から自由になれたら。そのときの気分で、のばしたりちぢめたり。そよ風がかぞえられちゃおかしい。

中間部は、左手がキッチリビートを決めてくる。ABA三部形式の対照が、この曲の個性。まとわりついてくるそよ風。やさしくふきぬけるそよ風。あそぶみたいについてくるそよ風。そよ風は大声ではない。ささやくように、耳をかたむける一人ひとりにはなしかけてくる。

シリア内戦では、都市部でも爆撃がおこなわれた。いきなり住宅に穴があく。恐怖でかくれているこどもたちにも、やはりそよ風はささやきかけたのではないか。

そのそよ風は地球をまわって、日本にも、シリアのこどもたちの声を届けてくれるだろうか。「そよかぜのみたもの」には、シリア内戦で住居も、教育もうしなったこどもたちと、その未来の姿もはいっている。

曲のおわりでは、「わたしたちのことをわすれないでね」との声がきこえてくるよう。

シリアのダマスカス、アレッポ、そして見る影もないパルミラ遺跡。おとずれた一人として、ふかく心をいためている。

楽譜はこちらからどうぞ。
https://store.piascore.com/scores/44642  


  • 2020年10月09日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)