たまりば

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健康意識と健康知識

町田市で作曲家やってるTomです。トーシツ制限について理解を深めたくて、手にした本。

以下、そのレビューをば。

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──レビュー企画用献本御礼──


坪井貴司・寺田新『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(東京大学出版会、2025年)

斜め読みするだけなら、アレコレどっからでも手に入る、健康向上&維持に関する話題。その媒体がなんであれ、読みとき能力(=リテラシー)を高めるには、じっさいのところ、どこまでわかってるか/わかってないか、つまり留保&条件について自覚しておいた方がいい。

この一冊は、健康の2大テーマたる食事と運動に関するどの章も、教わりやすい語り口ではじめられている(後述)。開いてよかったと、思う。おかげで、健康意識高めではあっても、目移りするばかりのさまざまな健康知識へ、おいそれとは飛びつかなくなりそうだ。

要となる健康のバロメーターは、いわずとしれた体重。したがって、食餌療法の「ダイエット」が、あちこちで言及される。一方、常日頃口にするものもまた、「ダイエット(=常食)」がもつ含義。単に、肥満に対する摂食コントロールのみを、「ダイエット」は指すわけではない。

第1章の糖質制限食が、体重コントロールとしてのみ言及されているのは、「常食」としてのダイエット観が抜け落ちているせいではないか。

また、「不健康なジャンクフード(坪井・寺田 2025:65)」が、健康への悪影響として前提視されている。ここは、なぜ不健康なのかを、ぜひ問うてほしかった。すると各種ジャンクフードは、飲料であれ固形物であれ、おしなべて糖質過剰で(各種メガ盛りを思い合わせよ)、それこそが不健康の原因だと、浮き彫りにできたろう。

ここから糖質の制限は、体重コントロールのみならず、それ自体が健康に資する常食=ダイエットだと、さらに突っ込めたはず。

学生への講義との体裁で、運動部に所属する学生からの質問をきっかけに、はじめられる章も多い。大学出版会ならではだが、でも運動部って、そんな食事にばかり気を使ってるの?健康意識というかたちで、そもそものスポーツ(含筋トレ)よりも摂食に重きが置かれるのって、なんか不自然。

さいごに健康に関する知識は、ローカルかつグローバルな食文化を、「健康」の一言で、ただ一色に塗りつぶしてしまう。なかば、食べる薬。常食は、いわば身体と文化の接点。そんな文化の香りが、多少なりとも行間から漂ってほしかったところ。  


  • 2025年04月24日 Posted by Tom Motsuzai at 08:30Comments(0)