たまりば

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感染症という人類史の画期

町田市で作曲家やってるTomです。歴史に学びたくもなる、昨今のパンデミック。

宮崎揚弘『ペストの歴史』(2015年、山川出版社)

ペストの場合、その感染経路は、ネズミ-ノミ-ヒト-ヒト。なかでも、問題となる「ヒトからヒトへは空気(飛沫)感染である(宮崎 2015:4)」。

1347-52年のペスト・パンデミックは、黒死病と呼ばれ、世界史レベルの出来事。

それ以降、近世にもペストは、くりかえし感染の流行を見る。

その特徴として:「ヨーロッパ世界における常在化、流行規模の縮小、流行の反復(宮崎 2015:137)」。

そんな局地的ペスト流行下で、起きたこと。

人々は都市部から流出。「行先は多くが農村部にある自分の所領や別宅であった(宮崎 2015:147)」。1628年、フランスはトゥルーズ。

クラスター対策。「流行の下火や帰還を祝う宴会は自粛させていたし、人の集まりには警戒していた(宮崎 2015:177)」。1665-6年のロンドン。

行政や医療の放棄。「保険監察官一六人のほぼ全員、市の参事七人中四人、市議会の議員、警察幹部、病院の責任者、市の上級職員、医師らもいた(宮崎 2015:184)」。1720年、フランスはマルセイユ。

ここから、新型コロナウイルス感染症の対策と比較して、きもちの上では備えられる(部分もある)。

***
イタリアの人文学者かつ、詩人のペトラルカ(1304-74)が、「自己自身に」という、韻文の手紙をのこしている。おそらく1348年。

 すべては神の怒りのためなのか。われらの罪の当然の報いか。
 あるいはただ自然の異変に由来する天体の影響なのか。

感染症の解明と対処法は、それから進んだ。黒死病は神の怒りでも、天体の運行のせいでもないと、知っている。

だが黒死病を、はるかに凌駕する規模のパンデミックに見舞われている現今。

それが人類史にもたらすインパクトの測定は、きたる歴史が、とりくむのだろう。

『ペトラルカ ルネサンス書簡集』(1989年、岩波文庫)  
タグ :読書雑記


  • 2020年11月30日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説47号目『雪原をさまようくま A Wandering Bear In The Snowfield』


    町田市で作曲家やってるTomです。『雪原をさまようくま A Wandering Bear In The Snowfield』。



    壮大な変奏曲。雪原をあるくクマが、冬ごもりをわすれてなにをしているのか。自由に情景をふくらませてほしい。

    大バッハの、無伴奏ヴァイオリンのためのニ短調パルティータ(=組曲)といえば、掉尾をかざるシャコンヌ(=変奏曲)。

    そのもられた音楽内容の豊かさと、各変奏の組み立てのたしかさ。きわめて息の長い展開、技巧のかぎりをつくす鮮やかさ。

    その徹底的な探究心において、数ある大バッハの作品でもひときわ注目をあつめ、後世に影響をあたえた。

    たしかに、意識した。めざすべき高みとして。それと、現代だからスウィングにした。

    自作解説10号目『シーラカンス Coelacanth』とおなじく、両手にメロディが出てくる。主題の一部が動機として変奏に利用されたり、トッカータ風のうごきに主題がかくされたり。両手の交差もある。

    とある年末、世間の仕事納めのつぎの日。あきらかに部屋着、起きたばっかという足どりで、スーパーにむかうおにいちゃんをみかける。まるで、冬ごもりから出てきたクマのようだった。

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://store.piascore.com/scores/44662  


  • 2020年11月29日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説46号目『みつばちのワルツ Bumble Bee's Waltz』


    町田市で作曲家やってるTomです。『みつばちのワルツ Bumble Bee's Waltz』。



    ちなみに英訳は「マルハナバチのワルツ」になってるけど、それでいい。

    自作解説44号目『なつのおわり End Of The Summer』で述べたように、ひとつの作品には、複数のイメージがはいっているから。

    かわいらしいワルツ。左手もほとんどがト音記号で、低音が出てこない。ところどころに意外な転調や、リズムの急停止があり、なかなか気がぬけない。

    フラット6つの変ニ長調。さいしょから変ニ長調で書こうと、生まれた作品。そんなわけで、調性と出てくる作品には相関があるようだ。

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://store.piascore.com/scores/44667  
    タグ :自作解説


  • 2020年11月28日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    新企画開催のお知らせ

    町田市で作曲家やってるTomです。あらたな和声の勉強会、ラクラク編。

    https://okesen.snacle.jp/event_profiles/detail/142

    だれもが知っているメロディからはじめる、和声入門。

    モーツァルト、ベートーヴェンから3曲のメロディを、4回にわたってとりあげます。

    もう一歩突っ込んで「知りたい」をかなえる、やさしい入口。

    準備なしの気軽さ、用意しました。  


  • 2020年11月27日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説45号目『鉱夫のトッカータ A Miner's Toccata』


    町田市で作曲家やってるTomです。『鉱夫のトッカータ A Miner's Toccata』。



    スリリング。ほぼ全編にわたって3和音を両手で交互にたたくだけなのだが、予想外の拍子変更。あやういリズムの綱渡り。リセットみたく、また頭からくりかえしたり。

    さいごは、いっきに地上へと抜出すように、グリッサンドでピアノの最高音をたたきだす。

    もちろん鉱夫の作業は危険が多い。ジェンダー問わずその努力に敬意を表して、世界中の鉱夫へ、この作品を捧げる。

    下記リンクから譜面を見てもらうと、一目瞭然な話。

    この曲書きながら、一体いくつ玉っころ(=黒玉)を塗りつぶすんだか、と、おもったとかおもわなかったとか。

    それでもスケッチは、かならず五線紙に手でとります(そののち、コンピューター浄譜)。そのほうがクオリティが上がるのです。

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://store.piascore.com/scores/44663  
    タグ :自作解説


  • 2020年11月26日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説44号目『なつのおわり End Of The Summer』

    町田市で作曲家やってるTomです。『なつのおわり End Of The Summer』。



    一雨(=ひとあめ)来る、なつのある日。とたんにすずしくなって。それとともに夏のおもいでが、おもいでにしたいあれこれとともに、昼寝の頭をよぎる。

    しかし、トーキョー生まれのトーキョー育ちとしては、東京大空襲をはずしては、なつのおわりはかたれない。

    市民を大量虐殺した戦争犯罪。人道への罪。

    中間部の直截な表現は、たたきつけるようなスコールとも、深夜の市街をねらう爆撃とも。雨がやみ、爆撃後の町にも、人のいとなみはのこる。

    音楽からなにをよみとるのも自由。とはいえ、ひとつのイメージで、すべてがかたりつくせるものでもない。それなら、ことばによる演説のほうが適当だろう。

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://store.piascore.com/scores/44654  
    タグ :自作解説


  • 2020年11月25日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説43号目『陽気な笛吹き A Gay Piper』

    町田市で作曲家やってるTomです。『陽気な笛吹き A Gay Piper』。



    興がのって、いつまでも吹きやめられぬ笛吹き。右手はフルートのつもり。だから和音は出てこないし、フルートで吹けない音域は出てこない。

    ロンド。

    何年か前、友人の母親が、病気になった。

    直接演奏をきいたことはないのだけど、フルートを趣味で演奏していた。一時は危ぶまれたのだが、一命をとりとめたとの一報に接したよろこびが、この曲になった。

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://store.piascore.com/scores/44650  
    タグ :自作解説


  • 2020年11月24日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    自作解説42号目『オオワシ Steller's sea eagle』

    町田市で作曲家やってるTomです。目先を変えて『オオワシ Steller's sea eagle』。



    オーボエとホルン、ピアノの三重奏。

    この曲は、さいしょヴァイオリン協奏曲だった。それをピアノ連弾に、それからオーボエ、ホルン、ピアノの三重奏にと、仕立て代え。
    楽器の個性がいきた、さわやかな曲想。

    上野動物園には、ケガでとべなくなったオオワシが展示されている。はたしてそのオオワシは、飛べてたころを回想するだろうか?そんなことをかんがえて、書いたもの。

    そののち、多摩動物公園にもオオワシが展示されていて、なんどもその飛翔を目の当たりにする。自己紹介参照。まぢかで水浴びしたり、エサをたべたり。そりゃあ、みごとなもんですよ。

    どうぶつはインスピレーションです。それにしても、なぜどうぶつは、ヒトの目にも美しくみえるのか?

    楽譜はこちらからどうぞ。
    https://okesen.snacle.jp/score_masters/detail/3678  


  • 2020年11月23日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    曲づくりを学ぶ&楽しむ会のお知らせ

    町田市で作曲家やってるTomです。新たなお題、発表。

    今回で8回目。しめきりは12月15日。

    https://okesen.snacle.jp/articles/entry16769

    毎回2小節の課題を出します。それを利用して16小節ていどの小品にまとめるというもの。

    編成は自由。

    今回のお題はヘ長調。主和音の構成音では、はじまらないメロディ。

    応募作品に、寸評つけます。
    リンク先から課題の旋律と、応募&寸評例を確認できます。

    あそびのつもりで、まず書いてみよう。  
    タグ :勉強会


  • 2020年11月22日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)

    文化を救おう

    町田市で作曲家やってるTomです。

    「文化を救おう」と題し、スペインはマドリー中心部で踊る、15人の若きミュージカル俳優。

    https://elpais.com/videos/2020-11-20/el-baile-de-15-artistas-de-madrid-para-concienciar-de-la-seguridad-de-los-espectaculos-en-vivo.html

    「文化を救うためには、いま、市民のみなさんの信頼がわれわれには必要です」と、このキャンペーンの企画者パブロ・ロペス氏は述べている。

    クレジットの前に出てくる、スローガン。

    "El arte limpia del alma el polvo de la vida cotidiana"
    「芸術は魂から日常生活のこまごまを洗い落とす」

    現在、痛切にまで響くことば。

    ***

    このキャンペーンは、11月初旬に公開された、ロンドンのウエスト・エンドで撮影されたものの、マドリー版とのこと。

    約3分という尺も、使用楽曲もいっしょ。



    地球を覆う、コロナ禍での試み。一方で、どちらもタイムスパンなしにみられるというのも、現代の事象ですよね。  
    タグ :音楽雑記


  • 2020年11月21日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)