たまりば

芸術・創作 芸術・創作町田市 町田市

『孤塁』または「終わりがみえない不安」

町田市で作曲家やってるTomです。すでに数々の受賞を誇る、今年の一冊。

吉田千亜『孤塁──双葉郡消防士たちの3・11』(2020年、岩波書店)

雑誌『世界』の連載が、単行本化。そして、刊行記念トークイベントが、2月15日、専修大学神田キャンパスで開催。

トークイベントは、『世界』2020年4月号に採録されている。

渡邉敏行「消防とは何か?──原発事故の経験から考える」『世界』931,214-21.

たまたま連載初回から、『世界』を読みはじめていた。

その一回目から、もう、わが目をうたがう記述のオンパレード。書かれていることが、にわかに信じられない。当時の震災が刻一刻と、その被害状況をあきらかにする、筆致のたしかさ。そして建屋が吹っ飛んだ原発へと、消火活動にむかう流れの緊迫は、この記録が残されたありがたさを、まざまざと感じさせる。

さて、2020年のトークイベントでは、最初『世界』で一回の読み切りのつもりだったと、明かされた。それが原稿一読後、とても一回では収まらないと、短期集中連載へ。単行本では、さらにプロローグとエピローグが追加された。そして数々の受賞にいたる、熱い反応と絶賛。

その場で単行本を購入。せっかくだからと吉田氏、渡邉両氏にサインをいただく。今からおもうと、だれかと握手をかわしたのは、あれが最後だった。

さらに原発事故で自主避難されている方と、会場で話す機会があった。現在の行動が正解なのか、「終わりがみえない不安」を、口にされる。

それがコロナ禍の今、地球上すべてのヒトが、おなじ立場に立たされようとは。  
タグ :読書雑記


  • 2020年12月06日 Posted by Tom Motsuzai at 11:00Comments(0)