たまりば

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うつくしさへの抵抗:かざりと男性

町田市で作曲家やってるTomです。

むやみに装身具でかざりたてることをしないわれわれ;それはなぜか。

メンズリング イヴ・ガストゥコレクション エキシビジョンat 21_21 DESIGN SIGHT Gallery 3(3月13日まで)。


これまでも何度か言及している、特別展 宝石at 国立科学博物館には、橋本コレクションから、200点ほどの指輪が展示されていた。それは、つねにヒトのゆびにあった、指輪の体系的な収集。

対比すると、ギャラリーのオーナーであったイヴ・ガストゥ氏のコレクションは、男性がみにつける指輪にのみ特化している。ご自身でされていたものも。そこからおよそ400点の展示。

パッと見、それがキリスト教であろうが、memento moriの象徴たるドクロであろうが、カメオであろうが、紋章であろうが、多様なモチーフにあふれているのが、みてとれる。また、宝石をもちいず貴金属だけの作例もおおい。

現代の指輪は、その象徴性を措くと、めにされるだけでなんの実用性ももたない装身具であることを、まずわすれないようにしよう。


この展示に連動するかたちの動画解説、Men's Jewelry Historyが、2021年12月より公開されている(日本語字幕つき)。



そのなかで、次の一節が、特に示唆的だ。22:33あたり。ここでは、ききとったスピーチを以下に。

  and this is one thing always keep in mind as conclusion, jewelry is meaningful, and men's jewelry is even more meaningful. because as we've seen since the middle of the 19th century, jewelry in accumulation was considered badly, so when you want to wear a piece of jewelry, you need to prove that it's important to you, it's full of senses, full of symbols.

「そんなわけで、なにかしらジュエリーを身につけたければ、それがあなたにとって重要であると証明する必要があります」(ドキッ、強調は筆者)。「ゆずってつかう:指輪」でやったことを、ずばり指摘されたかのやうな。


エキシビジョンでは、なんと、希望者に図版を無料配付。

日本人研究者の論考も掲載されたそのカタログより、クローデット・ジョアニス「男たちの装身具」には、男性がかざりたてることへの困難が、次のように明確に叙述されている。

  男性たちは自身の趣味や選択について聞かれると、それを説明することに難しさを感じることがあるという興味深い事実にふれておきたい(ジョアニス 2022:37)。

たしかに、好きなものについてかたるのはむずかしい。大義名分をことあげして、それを説明としてしまいがちだ。たんにうつくしいからでは、りゆうにならない。

上述のように、男性用の指輪がモチーフにあふれているというのも、それが説明のできるもので、同時に、それをみにつける意義をときあかしているからとも、かんがえられる。

モチーフは、みてわかる。一方でカットされた宝石は、うつくしいけれどもなにもかたらない──それ自体では。うつくしさ(と、それへの執着)は、男性性に抵触する。もしくは、男性のジェンダーコードを侵犯する。

「重要であると証明する」作業は、一目で理解できるモチーフなら、たやすくクリアできる。

さらにモチーフは、それ自体のうつくしさを主張してもくれる。

だからソリテールリングのやうな、宝石それよりほか、黙してなにもかたらない美は、男性性にとって脅威となるということ。ましてや、身体に直接みにつける装身具であれば。

この項、続きます。




  • 2022年03月05日 Posted byTom Motsuzai at 11:00 │Comments(0)

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