たまりば

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うつくしさへの抵抗:かざりと男性(承前)

ここにおいて美とは、それ自体無用な存在であり、なくてもいられるていどの存在(=美)に執着するのは、男性性が欠損した存在へと、当人を追いやる可能性があることになる。

いうまでもなく、男性性が欠損した男性(と、通常みなされる)とは、男性を愛する男性のことだ──しかも、女性的な。

この意味において、美と同性愛は、同義。

それゆえ美を、必要不可欠かつ、説明可能な存在としてひきもどすために、モチーフが用いられているといってよかろう。

たしかにうつくしい指輪をみにつけている;しかし、それは**のためだ。

不在の原因として、美への執着=同性愛をおいてはじめて、メンズリングにおけるモチーフの氾濫は理解されよう。


そして美とは、無用である一方、非実用の存在でもあった。

同性愛を「生産性がない」とみなす差別的見解も、美に(のみ)かまける連中との偏見が、力を貸しているだろう。

ところが、男性性を同性愛(=美)からきりはなすため、強迫的なまでにモチーフへ執着する姿勢がまた、あらたな美を生みだしてしまうパラドックス。たとえばドクロのモチーフは、無数のヴァリエーションをうみだしている。

同性愛は、それがどのような反応をひきおこすにしろ、むしろそれ自体で生産的ではないか


圧倒的なモチーフの数々に、指輪とはこれほどに個性を(も)表現するツールであったかと、めをみひらかされる。なによりもまず指輪とは、みにつける人の主張であった。

入場も無料、図版も無料頒布。どちらにも、かんぺきに編集された日本語の解説。後援にフランス大使館でもついていないことには(←勘繰りすぎ)、なっとくのいかない大盤振舞い。

それも、日本の文化普及への予算(と、意気込み)に、比較したらにすぎないかもしれぬ。

おわりに
とことん美を追求したらよい;それが文化外交の、旗印とし得るまで。

参考文献
クローデット・ジョアニス「男たちの装身具」ギヨーム・グロリユー監修『メンズリング イヴ・ガストゥコレクション エキシビジョン』(2022年、ヴァン クリーフ&アーペル支援によるレコール ジュエリーと宝飾芸術の学校),35-37.




  • 2022年03月06日 Posted byTom Motsuzai at 11:00 │Comments(0)

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